島根には、永い歴史と風土の中で育まれ、現代に受け継がれてきた優れた丁寧な作りで洗練された美しい伝統工芸品が数多くあります。
東西に長い特徴的な地形を持ち、山地や丘陵地が面積の9割を占める島根県。
これらは、土地の資源を上手に利用し、その時代時代の要請の中で多くの工人の手によって生み出されて生活に密着した実用品として、或いは調度品等として発展してきたものです。
長い年月を経て磨き上げられた伝統工芸品のひとつひとつは、暮らしの中に生きづく芸術品でもあります。
丁寧な作りで洗礼されたその美しさは、日本人の手のなせる匠の技であって、これからも日本の伝統文化と深い関わりを持ちながら、人々の生活に潤いと安らぎを与えてくれることでしょう。
島根県内には、出雲、石見、隠岐の風土と資源、歴史と文化に培われた伝統工芸品として焼物、和紙、漆器、そろばん、木工品、石灯ろう、めのう、染織物、刃物、神楽面、人形玩具などがあって、それぞれが継承されている伝統的な技術、技法により熟練した技能を持つ工芸職人によって作り上げられています。
日本神話を題材とした石見神楽や、どじょう踊りという滑稽な踊りを含む安来節やすぎぶしなど、伝統的な民俗芸能も数多く残っています。
そんな島根県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、60品目以上の伝統工芸品が存在します。

石見の伝統工芸

出雲石燈ろう
「出雲石燈いずもいしどうろう」は、昭和51年(1976年)に石工品の中で最も早く伝統的工芸品に指定された、島根県を代表する特産品です。
その昔、出雲国いずものくにといわれていた島根県東部の出雲市および松江市や鳥取県北西部の境港さかいみなと市で古くから作られてきました。
古墳時代から石棺などに用いられてきた島根県松江市宍道町しんじちょう来待きまち周辺で採ることができる “来待石きまちいし※”を原料としており、製作の始まりは奈良時代ともいわれていますが、盛んになったのは江戸時代とされています。
吸水性の高い来待石を用いた出雲石燈ろうは、雨を含みやすいため苔むすのが早く、色合いも数ヶ月ほどで趣おもむきある黄みをおび、自然とよく調和するのが最大の魅力でしょう。
また、出雲石燈ろうには熱や寒さにも強いという特徴があり、江戸時代初期に作られた作品が現存するなど耐久性にも優れています。

石見焼(いわみやき)
石見焼(いわみやき)は、島根県江津市周辺で作られている陶器です。
石見焼の特徴は、吸水性が低く強固で、塩分や酸・アルカリに強い素地(そじ)です。
飯銅(はんどう)と称される大きな水甕(みずがめ)が有名で、そのほかにも茶器や食器などの小振りな生活用品が多く作られ、酸や塩に強いため、梅干しやらっきょう漬けなどの保存にも適しています。

石州和紙
「石州和紙」は、石見国とよばれていた島根県西部で漉かれている和紙のことで、石州半紙とも呼ばれます。
石州和紙は良質のコウゾやミツマタ、ガンピなどを原料に、ネリにトロロアオイを用いて、流し漉きによって作られ、優しい光沢と強さが特徴です。