島根の地酒

神道とお酒は、切っても切り離せないものと言われています。
全国の神様が島根に集う神在月には、神々が酒宴を行ってきたと神話で伝わっているのですが、出雲市小境町には「佐香神社」という酒造の神様を祀った神社があって、日本酒発祥の地と言われています。
たとえば、英雄スサノオノミコトヤマタノオロチを退治した際に、「八塩折(ヤシオリ)之酒」を飲ませて酔っ払わせたというのは有名な話です。
数々の神話が残る島根は、神話の時代から高度な酒造技術を誇っていたという伝承もあるほど。
その流れをついで島根県では現在も日本酒造りが盛んなのです。
その伝統が現在に受け継がれ、高い酒造技術はいまや日本酒、焼酎だけでなくワインなどにも活かされ、全国の品評会でも高い評価を受けています。
日本酒の名産地の条件は、きれいで美味しい水があり、美味しいお米があるということ。
島根も例外なく、水資源が豊富で寒暖差が激しい気候から美味しいお米の産地として高い評価を得ています。
そんな豊かな原料を使って、長い歴史を誇る酒蔵の職人たちが先人から受け継いできたそれぞれの「酒造の技」で、銘酒を造っています。
神話に伝えられるだけでなく、出雲で発見される遺跡からも、弥生時代には酒造りが行われていたと推測されています。
そのため、奈良県や兵庫県といった全国有数の酒処と並んで、島根県を「日本酒発祥の地」とする説もしばしば見られます。
そんな島根県に色濃く根付く酒文化は、出雲杜氏、石見(いわみ)杜氏らの手によって豊かに発展。
地域ごとに独自のスタイルを確立し、今に伝わっています。

多彩な酒造好適米

「東の魚沼コシヒカリ、西の仁多米」と言われるほど、美味しいお米の産地として有名な島根では、「酒造好適米」も高品質なものが栽培されています。 自然に恵まれた環境で、酒造りの為に育てられる良質なお米から島根の銘酒が生まれるのです。
そのうち「改良八反流(はったんながれ)」「佐香錦(さかにしき)」「改良雄町(おまち)」「神の舞(かんのまい)」の4つは、島根県内で独自に開発された品種です。

「八反流」は栽培が難しく、一度は栽培がストップしていたという幻の酒米!
これが島根の人々の努力により、復活を遂げたのが「改良八反流」です。
「佐香錦」は高級酒の原料として開発された品種で、島根県の気候で栽培しやすいように改良が重ねられました。この酒米を使った酒は、現在も高級酒として市場に出回っています。
「改良雄町」は、良質な酒造好適米ながら、稲の倒れやすさが難点だった「雄町」を改良したもので、島根県の日本酒に広く用いられています。
「神の舞」は、ともに名の知れた酒造好適米「五百万石」と「美山錦」を交配し、寒さや病気に対する耐性を高めようと開発された経緯があり、おもに山間地帯で栽培されています。

このように島根県は、オリジナルの酒造好適米に富んでいるのが大きな特徴です。
島根の酒造りでは、これら地元の酒米にくわえて、古くより伝わる醸造法を取り入れることで、唯一無二の味わいを実現しています。

地元のお米や、天然の湧水などにこだわり造られる島根の地酒。
米と水のシンプルな素材だからこそ、杜氏の技術はもちろん地域の風土が表れるのが日本酒の魅力です。

人気銘柄

島根県は冬場の気温が下がるなどお酒造りの環境に適しており、水はミネラルが少ない軟水が中心のため、発酵が緩やかに進み、柔らかい酒質となります。
日本海の海の幸が豊富なこともあり、食材がおいしく味わえるように日本酒もつくられています。

月山(がっさん)
「月山」の蔵元である吉田酒造は、1730年(享保15年)創業という300年近い歴史をもつ老舗蔵です。
蔵を構える安来市は、戦国時代に難攻不落の城として名を馳せた月山富田城のお膝元として有名。
この地では、毎年、もっともできのよかった酒を「月山」と名づけ、城主に献上していたという伝承があり、これにあやかって銘柄名としていると言われています。
月山」は、硬度0.3という日本屈指の超軟水と、島根県産の良質な酒米を使用して造られるお酒。
すっきりときれいな印象で、あとに残らないクリアな飲み口が魅力です。その飲みやすさから、これから日本酒をたのしみたいという初心者向けの入門銘柄としてもおすすめできます。

李白(りはく)
李白」は、明治15年(1882年)創業の李白酒造が造る定番酒となります♪
蔵名と同じその銘柄名は、中国で“詩仙”と称される唐代の詩人、李白に由来。
李白酒造では「酒文化を普及し、後世に継承すること」を心がけに、出雲杜氏伝来の醸造技術を大切に守り続けるとともに国内にとどまらず、海外への輸出も盛んに行っています。
日本料理と抜群の相性をもつ「李白」は、日本の食文化とともに世界中に愛好者を増やしています。

豊の秋
明治29(1896)年創業の「⽶⽥酒造」(島根県松江市)。
「ふっくら旨く、心地よく」をモットーにする酒造りで、「ほっ」と、こころ和む時間を提供されています。
お米は島根県産の山田錦、改良雄町、五百万石、佐香錦、神の舞を自家精米して使用。
水は、松江市郊外の山の急斜面にある竹藪の下の岩の間から湧き出す水を見つけ、仕込み用に使っています。
やわらかな甘みにほどよい香り。
よく見かける「フルーティ」という表現がピッタリ!

玉鋼
辛さの中にある味の厚みが特徴。
日本刀の原料、和鉄玉鋼より銘名された簸上清酒を代表する日本酒です。
35%まで精米された山田錦を使い、低温でゆっくり発酵させて醸されています。
名前通りの、剛直な力強さを感じられる一本。
キレの良さを存分に楽しめる、冷酒で楽しむのがオススメです。

奥出雲
コクのある味わいを楽しめる島根の純米酒です。濃醇辛口タイプ。
冷やせばキレがあり、ぬる燗ならふくらみのある風味を堪能できます。
アルコール度数は15%。精米歩合は70%です。
使用する酒米は、すべて蔵元のある奥出雲町産。
自家精米で磨き、若い出雲杜氏が丁寧に仕上げています。

雪香
シャンパンのような飲みやすい味わいが特徴の日本酒です。
メーカー独自の瓶内発酵技術を使って仕上げたスパークリング日本酒
アルコール度数は5%で、甘酸っぱく飲みやすい点が魅力でしょう。
一般的なにごり酒と比べると薄めの乳白色。
やさしい甘さと適度な酸味のバランスを楽しめます。
原料米には改良八反流を使用。
普段あまり日本酒を飲まない方にも適した島根の日本酒です。

【七冠馬(ななかんば)】
七冠馬」を醸す簸上(ひかみ)清酒は、江戸時代初期の正徳2年(1712年)創業という歴史ある老舗蔵。
代表銘柄である「七冠馬」の名は、かつて競馬の名だたるレースで七冠を獲得した名馬「シンボリルドルフ号」をイメージしたものです☆彡
辛口でキレのあるのどごしにくわえ、口当たりもすっきり。口に含めばほんのりと香りが広がり、食事と一緒に味わうにもぴったりです。

【出雲富士(いずもふじ)】
出雲平野に蔵を構える昭和14年(1939年)創業の蔵元・富士酒造の代表銘柄。
富士酒造は「酒造りの細部に神様は宿る」をコンセプトに、妥協なき酒造りに定評があり、「出雲富士」のランナップも実力派ぞろいです。
出雲富士 純米」は、原料米である「山田錦」の旨味を十分に引き出した1本。
「青ラベル」や「赤ラベル」といった定番商品は、豊かな香りとキリッとした飲み口が特徴です。とくに魚介類の料理との相性がよく、燗で飲むのがおすすめです。


島根県の地酒は、いずれも奥深い味わいとともに、歴史を感じさせる銘柄ばかり。
入手困難になる前に飲んでおきたいですね☆彡 日本酒ビギナーにおすすめの甘口やフルーティーな日本酒から、スッキリとキレのよい辛口の日本酒、大事な人へ贈りたい高級な日本酒まで幅広いタイプの中から、お気に入りの1本を見つけてくださいね。